MedicalRice協会設立の趣旨


 米は古来から日本人の食生活を支えてきた。玄米には、食物繊維、ミネラル、ビタミンに加え、近年の研究でGABAなどの機能性物質が含まれており、抗酸化機能があることが分かってきた。特に、腸内細菌叢(腸内フローラ)を良好に保つ作用があり、免疫機能を高め健康長寿に貢献することも明らかになってきた。機能性成分の分析と加工方法を研究する中で、玄米のロウの部分のみを除去した「ロウカット玄米」や、たんぱく質の大部分を除去した「低たんぱく玄米」が開発されている。
 こうした玄米の摂取によって、腸内環境の改善、肥満解消、血圧降下、糖尿病予防、腎機能保全、認知症予防などの効果が期待されており、医療関係者との共同研究を進めるとともに、有用な成分を効果的に摂取できるよう加工した米を「メディカルライス」として普及させていく。
 例えば、たんぱく質を通常の20分の1以下まで減少させた慢性腎疾患用メディカルライスを食事療法に用いることは、「未病」の人々が透析を要する「病」の状態に陥ることを防ぎ、社会全体の医療費の増大の抑制に寄与する。
こうした医学的見地に基づく米の効用の見直しは、国内の水稲に新たな付加価値を与え、これに携わる農業関係者を大いに元気づけるものである。
 一方で、海外に目を転じれば、各国とも社会の高齢化に伴い医療費の増大が予想され、これを回避するための施策を模索しており、米を主食とする中国やタイでは、玄米の機能性に大きな関心を寄せ、同様の取組を始めようとしている。
 本協会では、こうした状況の下で、我が国の研究者、農業者、流通加工業者、消費者の協力の下、メディカルライスの規格の標準化を行い、健康に関するエビデンスを基盤として、疾病予防や食事療法への展開を図ることによって、日本社会全体における健康増進と水田農業の振興を図っていくこととする。